二人の姫命による天照大御神の御遷幸

御幸アイキャッチ画像 倭姫巡幸

毎年大勢の人が参拝する伊勢神宮は、令和4年一年間で内宮外宮あわせて600万人以上の人が神宮にお参りしました。(伊勢市による月例参拝者数より)

昔から「一生に一度はお伊勢参り」と言われたくらい庶民に根付いた伊勢神宮は現在の場所に鎮座するまでに、さまざま場所を廻りました。

天照大御神から授かった鏡を宮殿内に祀っていましたが、神様と一緒に生活するのは恐れ多いと思った崇神天皇が皇女の豊鍬入姫に託しました。その後、垂仁天皇は皇女の倭姫に新に天照大御神を祀るに相応しい場所を探すことをご命令され、今の五十鈴川のほとりに鎮まりました。

このページは『倭姫命の御巡幸』をもとに書いています。

*「とよすきいりひめ」の「すき」は日本書紀では「鍬」、「倭姫命世記」では「鋤」と書かれています。できるかぎりこのページでは「鍬」で統一しますが、たまに鋤があるかもしれません。あまり気にしないでくださいね。

最初の斎王として天照大御神に仕えた豊鍬入姫

54年間も神様に仕えた魂ってどんなでしょうね?

崇神天皇まで宮殿内で天照大御神と倭大国魂神の二柱を祀っていましたが御神威に恐れかしこみ、天照大御神は豊鍬入姫に、倭大国魂神を渟名城入姫(ぬなきのいりひめ)がお祀りすることになりました。

豊鍬入姫は倭姫に天照大御神を託すまで54年間ずっとお仕えしました。

笠縫邑では33年間天照大御神を御守りし、その後、相応しい場所を求めて御巡幸されました。丹波国や紀乃国、吉備国などを御巡幸されました。丹波国では後の外宮の御祭神になる豊受大神に縁がある吉佐宮に4年間滞在しました。

三輪山の麓を拠点に御巡幸されているように思えることや、木乃国は母の故郷であり地方の豪族と中央を神様のお力で結びつきを強化しているように思えますね。

きっと十代前半、私のカンでは11~12歳の頃に御鏡を託されて33年後に御巡幸を始められたことを考えると、まだまだ女の45歳で人生を諦めるのは早い!って言われているようで、これから挑戦する人に勇気を与えくれますよね。

斎王の基礎を築いた倭姫

時代が下ると数年で斎王を退くようにるが、倭姫は長く斎王だったよ

神前奉仕は若い女性がいいとか、赤い袴は年増には似合わないとか影で言いますが、完全に男性の好みやヒガミですよね。豊鍬入姫にしろ、倭姫は長く神様につかえました。

倭姫は伊勢神宮で甥・日本武尊と会談します。中央に敵対する勢力の平定が済んで都に戻ると、すぐに次の命令が下されることを倭姫に打ち明けます。その時に草薙の剣を渡し、影ながら支えました。

倭姫は大倭から淡海、美濃、尾張、伊勢を25年くらいかかり天照大御神を祀るに相応しい場所を巡ります。

地図を眺めると伊賀国・敢都美恵宮と伊勢国・奈具波志忍山宮が近くにあります。鈴鹿山脈のスキマ・関西本線の辺りを通ればもっと早く遷御できたのではと思います。

米原を通る東海道本線の方が多少標高が低いでしょうが、関西本線でも良かったんじゃ?と思います。もちろん、険しい山道を姫様が歩くには忍びないことがあるでしょう。

その他に神宮運営の基盤となる神田や御厨が必要だったと思いますし、淡海、美濃、尾張は中央と結びつきが強かったと考えられるので、皇女の訪問はそれなりに意味があったものと考えられます。

二人の姫命が神の声が聞こえる能力があったかどうかはわかりません。「神様にお仕えする」という使命をまっすぐに何十年も掛けて果たしたことのほうがスゴイことだと思います。

歴代・伊勢神宮候補地

歴代・伊勢神宮候補地。比定地なだけで縁はもっとあるよ

『倭姫命世紀』によると豊鍬入姫の御巡幸地をあわせて26カ所あります。

6番目の名方濱宮までが豊鍬入姫の御巡幸地です。倭姫は奈良から三重へすでに最終地が決まっていたようなコースですが、豊鍬入姫の場合いきなり岡山とか思い立ったら吉日タイプようなコースになっています。

国名宮殿名読み方比定地住所参拝済み
1大倭国笠縫邑かさぬいむら檜原神社奈良県桜井市
2丹波国吉佐宮よさのみや籠神社京都府宮津市
3大倭国伊豆加志本宮いずかしのもとみや與喜天満神社奈良県桜井市
4木乃国奈久佐濱宮なぐさのはまみや日前国縣神宮和歌山県和歌山市
5吉備国名方濱宮なかたのはまみや伊勢神社岡山県岡山市北区
6大倭国御室嶺上宮みむろのみねのうえのみや大神神社奈良市桜井市
7大倭国宇多秋宮うたのあきみや阿紀神社奈良県宇陀市
8大倭国佐佐波多宮ささはたのみや篠畑神社奈良県宇陀市
9伊賀国隠市守宮なばりのいちもりのみや宇流富志禰神社三重県名張市
10伊賀国穴穂宮あなほのみや神戸神社三重県伊賀市
11伊賀国敢都美恵宮あへつみえのみや津美恵神社三重県伊賀市
12淡海国甲河日雲宮こうかひくものみや垂水頓宮跡滋賀県甲賀市
13淡海国坂田宮さかたのみや坂田神明宮滋賀県米原市近江町
14美濃国伊久良河宮いくらかのみや天神神社岐阜県瑞穂市
15尾張国中嶋宮なかしまのみや酒見神社愛知県一宮市今伊勢町
16伊勢国桑名野代宮くわなののしろのみや野志里神社三重県桑名市多度町
17伊勢国奈具波志忍山宮なぐはしのおしやまのみや布気皇館太神社三重県亀山市
18伊勢国藤方片樋宮ふじかたのかたひのみや加良比野乃社三重県津市
19伊勢国飯野高宮いいのたかみや神山神社三重県松坂市
20伊勢国佐々牟江宮ささむえのみや竹佐々夫江神社三重県多気郡明和町
21伊勢国伊蘓宮いそのみや磯神社三重県伊勢市
22伊勢国瀧原宮たきはらのみや瀧原宮三重県度会郡大紀町
23伊勢国矢田宮やたのみや不明三重県伊勢市
24伊勢国家田田上宮やたのたのうえみや櫲樟尾神社跡三重県伊勢市
25伊勢国奈尾之根宮なおしねのみや皇女の森説三重県伊勢市
26伊勢国五十鈴宮いすずのみや内宮三重県伊勢市
伊勢国倭姫宮やまとひめぐう内宮別宮三重県伊勢市

私の旅行記がリンクされていますので、よかったら読んでみてくださいね。