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岐阜県瑞穂市:美濃国伊久良河宮を訪ねて

倭姫巡幸

倭姫命が天照大御神の御杖代になり各地を巡幸した場所を訪ねるシリーズです。

三重県に鎮座する伊勢神宮に奉る天照大御神はもともとは宮殿内に奉られていましたが、崇神天皇が宮殿内で共に生活を一緒にするのは恐れ多いと思われて、トヨスキイリヒメ(豊鍬入姫)に託し宮殿の外でお祀りするようになりました。

その後、垂仁天皇が倭姫に天照大御神の御杖代として任され天照大御神を祀るのに相応しい土地を求めてご巡幸がはじまりました。

今回は令和5年12月下旬に、参拝した岐阜県瑞穂市に鎮座する美濃国伊久良河宮の参拝日記になります。この日は特に他に散策したいところもなかったので、バス停最寄りの温泉施設でゆったりと過ごしましたよ。

伊久良河宮(いくらかのみや)について

倭姫の御巡幸については『日本書紀』『皇太神宮儀式帳』『倭姫命世記』があります。天照大神が内宮に鎮まるまでに祀られた神社や館、場所を元伊勢とよびます。淡海国坂田宮の次に新たな宮地を求められた場所が美濃国にあります。

そのお宮を『皇太神宮儀式帳』では伊久良賀宮(いくらかのみや)と、『倭姫命世記』では伊久良河宮(いくらかのみや)と表記されています。

次に美濃の伊久良賀の宮に坐しき

『倭姫命の御巡幸』の「皇太神宮儀式帳」より

十年辛丑、美濃の国の伊久良河宮に遷幸なりまして、四年斎き奉る

『倭姫命の御巡幸』の「倭姫命世記」より
グーグルマップより

現在の宮地と比定されている場所は岐阜県瑞穂市居倉字中屋敷781に坐す天神神社の森で、根尾川の支流・犀川岸辺辺りの森が伊久良河宮と考えられています。

地名とお宮の名前が同じです。「伊久良」と「居倉」。歴史のある地域ですね。伊久良河宮の「河」は犀川のことかもしれません。治水工事をすると川幅が狭くることが多いですが、昔はそれなりに広い川だったと思います。

天神神社は明治までは天神宮と呼ばれていました。現在は天神神社といい、御祭神は産霊(むすひ)の神である高皇産霊神と神皇産霊神をお祭りしています。

御船代石奥が伊久良河宮と考えられる

天神神社の御神殿右横に御船代石(みふなしろいし)があります。

瑞穂市教育委員会による伊久良河宮の看板に「古い絵図には、御船代石の前にも拝殿があり、大切にお祭りされていたことがわかる」とあり、「この御船代石のあたりが昔の御禁足地で、神獣文鏡などの祭祀遺物が出土している」とあり瑞穂市史跡に指定され保護されています。

御神殿に神様を祀る形式よりも珍しい形の石(岩)に神様が宿ると考えてお祭りする方が古い神社形式であり、昔は拝殿や、さらにその昔ではその付近に祭具を奉りました。

現在の天神神社は後から別理由で建立された神社かもしれません。御船代石の後ろには伊勢神宮の内宮外宮が祀られた神社と倭姫を祀った神社が建ちます。そのため、伊久良河宮は御船代石の後ろと考えられています。

御船代石は不思議な石

この御船代石は見ようによっては船のように見えなくもありません。50センチくらいのL字型した石が左右向き合って並んでいます。L字が自然にできたのか、人工的にできたのか謎です。ここに何か乗せたのかな?って思うくらい腰掛けるのに丁度良い背もたれ具合のL字です。

石の形も不思議なのですが、名前の「御船代」もなんだか不思議な感じがします。

御船代はご神体を納める御樋代をいれる船形の箱をいいます。その御船代を納めているのではないかと思われる御船倉が瀧原宮にありました。

また『倭姫命の御巡幸』にはここから二艘の木船で尾張国に向かったとあります。この辺りは大きな川が何本も流れる地域です。移動するには船は大事ですし、大きな川を渡るので、まぁまぁ危険を伴ったでしょう。

この御船代石は単純に「神様が宿る石」だけじゃない、なにか別の意味がある気がします。

この日は神社と温泉を楽しんだよ

伊久良河宮に行く途中の電線映えスポット

さて、この日の行程です。前日は名鉄岐阜駅が部屋から見えるサンホテル岐阜さんに宿泊しました。ここは美味しい朝ご飯が無料でついていて、名鉄JRともに駅に近いため大変便利なので、愛知岐阜に行くときは必ず宿泊しています。

名鉄のほうが近いため、名鉄駅前のバス停から出発しました。バスは西濃厚生病院行きの「イオンタウン本巣」でおります。岐阜駅から50分くらいかかりました。

伊久良河宮近くにもバス停がありますが、瑞穂駅からでているシティバスのため、本数が少ないこと、電車移動しなくてはならないので、岐阜駅出発のバスを利用しました。

イオンタウンというので大きなイオンのショッピングモールを想像していましたが、平屋建物が敷地内に何棟か建っているような商業施設でした。そこから南の方へ15分くらい歩きます。

徒歩15分なんて私には慣れたものですよ。能褒野王塚古墳は片道40分ですよ。それに比べたら近い、ふんふんふーんと鼻歌歌いながら伊久良河宮に向かいました。

橋がかかって用水が見えますでしょうか?

まだ少ししか廻っていませんが、水路が境内地の回りを囲んでいる元伊勢が多いような気がします。水は命の水で生活に必要ですし、お供えです。また五十鈴川のように身を清める場所でもあります。もうひとつ聖俗をわける境界線でもあるな、と感じました。

黒くて格好いい門です

橋を渡って少し歩くと鳥居に似た山門(神社では何というのでしょうか?)があり、更に進むと井戸と手水、消毒液がある手水舎がありました。

御神殿を横から見上げた図。立派な御神殿です

広い拝殿と本殿とその間に5メートルくらい長い幣殿が備わった天神神社が建っています。瑞穂市指定重要文化財である御本殿は彫刻や軒下を守る神様や狛犬が侍り立派です。ここは瓦も立派なんですよね。全く無知なので「立派だな~」で終わるので、自分で自分が残念です。

一通り堪能しても20分在れば十分だったので、イオンタウンにもどります。イオンタウンの隣に温泉施設「ぬくいの湯」があるので、3時間くらい温泉施設で休むことにしました。

御神殿の両側にいる猪八戒みたいな神様です。名前はなんでしょうか?

ここは入浴料だけで岩盤浴が楽しめるところなんですよ。岩盤浴は女性専用もありますが男女一緒に入れます。大体の温泉施設は岩盤浴は別料金なので、十分に温泉施設を楽しむことができました。

岐阜出身の知人に「ぬくい」の由来をきいたら、むかし暖かい水がわく井戸があったと聞きました。もし伊久良河宮に行かれる方はぬくいの湯にも寄ることをおすすめしますよ。

以上です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。