このページは古事記をテーマに、日本書紀との違いをまとめています。古事記についてはこちら、太安萬侶についてはこちらをご覧ください。
なるべく分かりやすいように書いていますので、よかったら最後までお付き合いください。
ここに書いてあることが正しいとは思いません。
古事記を読んでみようかなと思って頂けたら幸いです。
日本で最初の正史・日本書紀について
古事記編纂の8年後に、712年に「日本書紀」が献上されました。
日本書紀は古事記と同じ頃に天武天皇から舎人親王を含めた12名が国史編纂のご命令を受けました。そのため、日本書紀は日本最初の正史、または勅撰国史と呼ばれています。
中国の歴史書にならい編年体で年順にかかれ、当時の中国を意識した書き方になっています。
なぜ古事記は「正史」といわれないのか?
「あれ?古事記も正史なんじゃないの?」と疑問に思いましたか?
どちらも天皇の命令で作られていることは同じです。だけど、古事記は正史と見なされていません。それはなぜでしょうか?それは、古事記の成り立ちが関係しています。
一度編纂が中断されている古事記
たしかに古事記は天武天皇の御発意で正しい帝紀・旧辞を稗田阿礼に誦習覚えさせました。しかし、天武天皇崩御後、稗田阿礼が誦習した帝紀・旧辞の編纂は中断されてしまいます。
一方の日本書紀は崩御後も続きました。編纂の任命を受けた舎人親王は天武天皇の子どもです。他にも関わった忍壁皇子も同じ天武天皇の子どもで、川嶋皇子は天智天皇の子どもです。
古事記序文には古事記編纂には稗田阿礼と太安萬侶しか関わっていないようです。もし親王や皇子が関わっていたら作業は中断されることはなかったでしょう。
公式性が怪しい古事記
正史とは公式に編纂された歴史書をいいます。その点で、古事記は怪しいのです。
日本書紀には国史編纂について、舎人親王らが国史編纂のため招集されたことが書かれていますが、古事記については古事記序文にしかかかれていません。
古事記が公式な文書であれば、日本書紀に書かれているはずです。そのため、古事記は正史と言いがたいのです。
古事記は公開が目的ではなかった
もう一つ考えられる事は、太安萬侶が考えた和漢混合の変体漢文です。純漢文でないため、海外には通用しません。日本国内で読まれることを前提で書かれています。
さらには特定の人にだけ伝われば良いと思っていたのではないかと思います。たとえば、天皇になるかもしれない親王や皇子です。天皇になったとき、周りの臣下や豪族に翻弄されないように正し知識を身につけるために古事記を読み習うことが目的だったと考えられます。
また多く和歌を記載していること、情緒豊かに書かれており、太安萬侶がこころを表現したかったことを考えると、親王や皇子の情操教育に役立っていたのではないかと思います。
そのため古事記は世間に向けて公開していない歴史書のため正史とは見なされないのでしょう。
古事記と日本書紀のここが違う
なんとな~く古事記と日本書紀って違うんだなぁと感じて頂けたと思います。ここではもう少し具体的に違いをまとめます。
古事記 | 日本書紀 | |
キャッチコピー | 現存する最古の歴史書 | 日本最初の正史 |
御発意された天皇 | 天武天皇 | 天武天皇 |
献上された天皇 | 元明天皇 | 元正天皇 |
編者 | 太安萬侶・稗田阿礼 | 舎人親王など12名 |
完成した年 | 和銅五年(712年) | 養老四年(720年) |
巻数 | 3巻 | 30巻(他天皇系図1巻) |
どこまで | 第33代推古天皇 | 第41代持統天皇 |
書き方 | 紀年体・変体漢文 | 編年体・漢文体 |
特徴 | 天皇を中心とした物語 | 「一書に曰く」と他の説話を紹介する |
他には神様のお名前が違ったり、同じ神話でも内容が違ったりと細かな違いはあります。私の感覚ですが、世間でよく知られている神話は古事記が中心です。イザナギとイザナミの物語も天照大御神の誕生も、古事記と日本書紀で違っていますが、古事記の方が有名です。
日本書紀ではイザナミとイザナギは死別することなく天照大御神を生んでいます。
古事記は近年まであまり重要視されなかった
編纂後の扱いも古事記と日本書紀では違っていました。日本書紀は編纂の翌年から講師を招いて講演会が行われ、日本書紀の理解や普及が積極的に行われました。
古事記はそれに比べ参考書程度に扱われていましたが、卜部家に渡り研究がされていました。江戸末期に国学者が盛んに古事記を勉強し出版することで古事記の地位が上がりました。
記紀の違いは編纂目的の違いから
さて、今まで日本書紀との違いをまとめてきました。違いがそのまま優劣になり、昔の私のような誤解を生んでしまったら残念です。
どうしてそんな違いが生じてしまったのかは編纂の目的が違っていたと考えてください。中国の書物にならった名前のつけ方にもヒントがあるのですよ。
- 記・・・帝王について語る歴史書←古事記
- 紀・・・編年体で書かれた歴史書←日本書紀
- 列伝・・・臣下やその多を備えた紀伝体の歴史書
二つの歴史書が同時期に書かれた背景については、別の機会にしたいと思います。
詳しくは上の表で確認してくださいね!ちなみに、「古事記と日本書紀」を略して「記紀」と書きますよ。