あなたはセミナーや講演会のアンケートに「面白かったです」「頑張ってください」と書かれていませんか?書かれている人はちょっと反省した方がよいかもしれませんよ。
今回は矢野香著『その話し方では軽すぎます』はエグゼクティブのような人前で話す人だけでなく、相手から尊重されたい、思うような印象を与えたい人におすすめの本です。
エグゼクティブになったら読む本
10年以上前の2012年に発刊された本ですが、”正統派スピーチ”は色あせることなく現在でもしっかりと通用する話し方です。
この本はエグゼクティブや政治家のような公的要素をもった人物が確実性と信頼性を重視した人前で話すときに必要な技法を3つの要素に分解して解説した本です。
エグゼクティブでなくても、人前で話す機会がなくても、私のように「話すことが苦手」と思う人にぜひ読んで欲しい内容になっています。
正統派スピーチに独自性はいらない
エグゼクティブや政治家が学ぶ話し方は、言葉巧みに相手をぐいぐいと惹きつけ(引きつけ)る話術や個性で相手を魅了する話し方ではありません。この本ではそういったテクニックや独自性にたよらない正統派スピーチを学ぶ事ができます。
相手の心に刺さらなくても、面白い話をしなくても、魅力的な個性が必要ではないと分かっただけでも安心しませんか。正統派スピーチを知れば、誰でも落ち着いた重みのある話し方を身につけることができます。
この本の構成
『その話し方では軽すぎます』は5章に分かれております。私なりに5章をまとめると、第1章は「どういった印象を与えたいか」、第2章は正統派スピーチとは、第3~5章は実践編の3つにまとめられます。第3章は社外・社内シーン別編、第4~5章は話す態度を中心にまとめることができます。
目次より各章のタイトル
- 人前で話す立場になったら、厳守してほしいこと
- 軽い「話しグセ」を改善する!7つの速効策
- エグゼクティブの「やってはいけない」言動リスト
- クラス感が漂う「自己演出」の基本
- 隙をつくらない!人前に立つときの「万全策」
この記事では第1章と第2章を中心にまとめます。まとめつつ、ところどころ私の感想が混じっていますので、実際の本で確認して見てくださいね。矢野香さんの本は色々ありますが、今の地位を築いた『その話し方では軽すぎます』は必読ですよ。
まずはあなたが他人に与える理想の印象を考えよう
話し方と印象の一貫性があなたの話し方に重みを持たせます。あなたが言いそうな意見を、言いそうな切り口で出しそうな声で、表情でジェスチャーでスピーチすることで、聞き手からの信頼を得られます。
信頼は聞き手が期待している話し方をすることで積み重なっていきます。信頼を得るために、与えたい印象をつくることが正統派スピーチの第一歩になります。
印象づくりで留意しなくてはならない点が第4・5章に書かれています。たとえばパーソナルカラーで馴染む色を多用すると逆効果で、馴染み過ぎてその他大勢に溶け込んでしまうとあり、少し違和感のある色やポイントを使うとよいと説明がありました。他にもすぐに実践しやすいことが書かれているので、詳しくは本を読んでくださいね。
好印象を与える3つの要因
与えたい印象は、「〇〇さんって知っている?」と聞かれたときに言われたい言葉をもとに印象を決めます。「あの美人で偏差値の高い大学卒業の人?」が答えだとしたら、あなたを特定する明確な特徴が伝わっていないことになります。
あなたはどんなふうに噂されてほしいですか?言語化してみましょう。
なかなか難しい人は好印象を与える3つの要因から、特に押したい要素を選びます。
目指す印象に近いアナウンサーを探そう
相手に与えたい印象は「親しみやすさ」ですか、「活動性」それとも「社会的望ましさ」でしょうか?イメージしやすいようにアナウンサーで例えてみましょう。
アナウンサーから話し方や声のトーンだけでなく、立ち居振る舞いやファッションなども参考になります。
声の印象も3つの要因で変わる
真似したいアナウンサーを見つかりましたか?色々な動画でアナウンサーの話し方や声の出し方を見ることができます。担当する番組のアナウンサーの声の特徴を3つの要因に当てはめることができます。
3つの要因にあわせた声の出し方があります。
逆に、自分の声の特徴を活かして印象をつくるのも一つの手かもしれません。私の場合は「やや低めの声」「早口」です。早口がなかなか直らないうえに、話がのってくると更に早口になります。活動性を目指すのが近道かもしれません。
実力不足かも・・・と思ったら
与えたい印象が決まっても実力不足で「本当にこれでいいのかな」と不安に思うかもしれません。実力や実績は積み重ねで後からついてくるものです。そこはぐっとこらえましょう。
印象は3つの要因だけでなく「年齢」「性別」「言葉使い」「見た目」からも影響されます。
あなたが真似たい人、憧れの人が今のあなたくらいの年齢だった時、実績だった時はどんな様子だったでしょうか?その時の様子を真似るのも良い方法です。きっとあなたの憧れの人も「実力不足」と感じていても堂々と振る舞っていたと思いますよ。
次は、印象と声の方向性が決まったら、いよいよ重みのある話し方を学びます。
重みのある話し方とは
話し方が軽い人、思い人はどこが違うのでしょうか?
話の軽い人は、その場に居る人を巻き込んで楽しく盛り上げるのが得意です。そして、話し手の軽妙なキャラクター印象しか残らず、「結局、なんの話だったかな?」と終わる傾向にあります。一方の話し方が思い人はその場は楽しい・面白いという感情が聞き手には持たないかも知れませんが、「あんなこと言っていたな」と後になってから言葉の重みをかみしめることができます。
どちらが良くて悪いかではありませんが、話の内容や自分の思いを相手に印象づけ、信頼を得たい場合は話に重みを感じさせる話し方をします。
番組の中で担当するアナウンサーをバラエティー、ニュース、レポーターと分けていたりしますが、通常は一人のアナウンサーが話題の重さに合わせて、話し方を使い分けています。
話し方の軽重を決める3つの要素
その人の話し方が軽いか重いかを決めるポイントが3つの要素に分けて考えることができます。
それは「話す内容」「話す態度」「話す声」です。話し方が軽くなる原因はこのどれか一つでもぞんざいに扱うからです。
「話す内容」においては、話し手が「~だそうですよ」「~らしいですよ」「~と思います」の語尾ばかりの内容では、話の信憑性が疑われます。
「話す態度」では、体の一部が揺れていたり、瞬きが多いというケースがあります。心理学では話し手の不安や焦りを現すと考えられているので、聞き手も安心して聞くことができません。
最後の「話す声」は、滑舌が悪かったり声が高いことなど挙げられます。
話グセは誰でもありますが、滑舌の悪さは舌の筋肉を鍛えることで改善できます。他にも少し意識するだけで改善することがあるので、3つの要素について自分はどうなのかな?と確認してみましょう。
話す内容は「正確さ」にこだわる
話に重みを持たせるために、「正確さ」を重視します。出所のわからない情報をそのまま相手に伝えていないか、曖昧な言い方をしていないか、正しい言葉使いができているかなどです。
その例えとして、とある会社の株主総会での社長の報告があがっていました。
弊社は、若い人から定年後の人まで、大勢の社員が頑張ってくれております。取引先のお客様は日本中にいらっしゃいます。最近はアジアの国々からも問い合わせがあるそうです。おかげさまで、来年度はさらに売り上げを伸ばすことができそうです。
矢野香著『その話し方では軽すぎます』より
「~そうです」が2回あり、なんだか他人事のように話す無責任な社長と思われそうですね。
この本では改善ポイントとして3つ上がっています。
- 数字・固有名詞を示す
- 情報源を明らかにする
- 推測は話さない
他にも注意点がいくつか書かれていました。特にエグゼクティブになれば評価言葉に気をつけてほしいと思います。
私は先日、所属する組織の上から2番目の立場の人が、私より10歳以上若い女性にむかって「女性なら君が一番上手い」と宴会で言っているのを聞いてしまいました。他にも女性先輩がいる中で聞こえるような声で「一番」という評価はしてはいけないなと思いました。目上の方は「現在」だけを見て判断しているのかも知れませんが、浅はかな言動だと感じました。
その他の注意点
- 事実を話す
- 感情を入れない
- 評価言葉を入れない
- 正確な言葉使いをする
- 中立的な立場で敬語を使う
- 幼稚な言葉を使わない
話す態度が印象を左右する
「話す態度」の改善ポイントは2つあります。
- 絶えず動かない
- 語尾をきちんと下げる
この2点が挙がっていますが、第3章から第5章の多くは「話す態度」に関わる事が書かれています。矢野香さんが特に「最悪なクセ」と言われいる「絶えず動くクセ」の中で多いのが「うなずき」「まばたき」を挙げています。
うなずきながら話す人と話すと疲れます。絶え間なく動いているので、「急いでいるのかな?」「早く話を切り上げた方がいいのかな」「質問しちゃまずそう?」なんて思いながら聞いているので話の内容は入ってこないし、忙しいので後で「あの人と話すと疲れるな」と思います。
また、絶え間なく動く人、語尾を下げない人は子どもぽい印象を与えます。語尾を上げっぱなしは言い切ることができない不安さ、その場を雰囲気を壊すかも知れない恐怖から来ているといわれます。そんな頼りない感じでは話に重みがでないのも当然です。
話す声は自然な声で滑舌よく
最後の話し方を改善するポイントです。話す声は「舌の筋肉」と「音程」に気をつけます。
- 舌の筋肉を鍛えて滑舌よくする
- 高めの声で話さない
舌の筋肉が衰えると上下運動ができなくなっていき、発音が難しくなりその結果、言いよどみや言い間違いのため言い直しが増えます。また、日本語の音としてリズムが書き取れない、ひとつの言葉の中で速さが変わるといった話し方になります。
高めの声とは、「よそ行きの声」のことです。人前で電話にでるとき、接客するときなど、家族や友人と話す声ではない声のことです。たまには自然体な地声を混ぜることで、あなたの人柄や想いが伝わります。
話し方と同じくらい聞き方も大事
話し方の本ではありますが、同じくらい話していないときの態度について言及されています。
話を聞くとき、素のとき、予想外の事態になったときも大切です。話をしていない時こそも、この人の話を聞く価値があるのか・信頼できる人なのか評価が決まると書かれています。
私たちは重い人なのか・軽く扱ってもいい人なのか常に判断にさらされていることになります。素のときは気が抜けているときです。「素のとき、意識しているときのギャップを少なくしよう」と書かれていました。
まずはどんな印象を与えたいか考えることがファーストステップです。私はどうも軽く扱われることが多いので、言動の見直しが必要です。がんばりますよ!