祝詞の文体と表記について。「宣る」の上から下への呪縛をほどく

祝詞の文体と表記法のアイキャッチ画像神道関係

この祝詞シリーズでは祝詞がもっと身近になるように、誰でも書けるようになることを目指して祝詞について回数にわけて解説していきたいと思います。

今回は祝詞の文体から祝詞について考えてみたいと思います。また祝詞の書き方にも触れたいと思います。

『神道辞典』では祝詞について、「神祭りの際に斎主が神に対して唱える独特の文体をそなえた言葉。」と説明しています。その独特の文体とは一体なんでしょうか?

さて、それではしばらくお付き合いくださいね。

みきみかん
みきみかん

今回のネタも私のモヤモヤが原因です。それは後ほど

初心者のうちからしっかりした手引きを側において勉強した方が味わい深い祝詞が書けるようになりますよ。

祝詞の文体について

『神道辞典』では祝詞について、「神祭りの際に斎主が神に対して唱える独特の文体をそなえた言葉。」と説明しています。

そもそも「文体」とはなんでしょうか?Wikipediaに次のように「文体」を説明しています。

日本語「文体」には、次に挙げるような複数の定義がある。
1.「和文」「漢文」「和漢混淆文」など、言語の基本的な構造・表記法の違いにより分類される文体。
2.「だ・である調」のような常体、「です・ます調」のような敬体など、文章の様式としての文体。近代以降の日本語では、文芸評論や文章読本の中で触れられ、その後の研究や実作に影響を与えた。坪内逍遥が『小説神髄』で提唱した「雅文体」「俗文体」「雅俗折衷文体」や、谷崎潤一郎が『文章読本』で提唱した「講義体」「兵語体」「口上体」「会話体」の分類などがある。書き言葉の「文体」に対し、話し言葉では「話体」(談話体)という用語を用いることもある。

文体ーWikipediaより

文体とは、簡単にいうと「どのように書いているか」です。古事記は和漢混合体でしたね。

祝詞は「奏上体」と「宣命体」の2種類に分けられます。見分け方は祝詞の最後の言葉で文体の判断ができます。

奏上体とは

奏上体とは、「 称(たた)へ辞(ごと)竟(お)へ奉らくと 白(まお)す」「白し給(

たま)はくと申す」で終わる祝詞です。

通常、御祈願やご神前で申し上げている祝詞は「恐み恐みも白す」と書かれますので奏上体です。私の仕事の範囲の祝詞は奏上体です。

宣命体とは

宣命体とは、「諸々聞(きこ)し食(め)せと宣る」「称へ辞竟へ奉らくと宣ふ」で終わる祝詞です。

神様や天皇が臣下や臣民にむけた言葉は当然、宣命体になります。

例えば御祭の場所に集まっている人に向けて読み聞かすような祝詞です。6月と12月に行われる大祓式の大祓詞はこの形になります。

祝詞は「宣命書き」という表記法で書く

次は祝詞の大まかな書き方です。祝詞の表記法は宣命書きと読んでいます。

祝詞の基本漢字で書きます。主に名詞や代名詞、動詞や形容詞の語幹などが大きく漢字で書かれます。助詞や助動詞などは動詞などの文字の大きさの半分くらいの大きさで万葉仮名を用いて表記されます。

Photoshop Elementsで画像を作ったけど、文字の右寄せってなさそうです。

小さく書いた文字は右に寄せるか、大きな文字の下に二行にしてに書きます。

実はね、宣命書きは身近なんですよ。祝詞だけじゃなく、私たちが普段何気なく書いている文章やこのブログも同じ宣命書きで書かれています。万葉かなをひらがなにしたのが現代に続いています。ビックリですよね。

万葉仮名について

万葉仮名は神社さんや包括法人の指導によって違います。私は誰かに見せるものじゃないから、書きたい文字でいいんじゃないかな、と思っています。

例えば、へは「閉」が多いですが「柄」を私は使いますよ。あと、みは「美」ですが、なんとなく「美しい」と言う文字を万葉仮名に使うのは忍びなくて「未・身」をつかっていますよ。

次の表は、私が使っている万葉仮名の表です。書いているうちにだんだん覚えるので暗記する必要はありません。「べってなんだったかなー」ってよくやっています。


身・未志・氏
津・都
柄・閉

困った時に万葉仮名を引いている本は遠藤干の『祝詞百撰』です。西牟田崇生編著の『祝詞辞典』もオススメですよ。

こばち
こばち

そういえば濁音はあるけど破裂音はないなー

まぁ、確かに古語で破裂音(半濁音)聞かないね。

「宣る」は神聖な言葉。言霊信仰を表す言葉

祝詞の文体に宣命体と奏上体の2種類あり、祝詞の表記法は宣命書きです。祝詞も「ノリ・ト」。どれも「宣る」の上から下への意味がバッチリ入っています。

それなのに現代では神職から神様への下から上へが主流です。上から下の意味はおかしいんじゃないんだろうか?と思うようになりました。

もともとは神様から天皇へ、天皇から臣下へ、または天皇から国民へと上から下へ読まれていたものが下から上へと変化があったのではと考えられます。

現代の人からしたら「神様から天皇へ」の部分が引っかかるかもしれませんが、天皇は神様の子孫で、天照大神のお孫さんなのですよ。天孫降臨の神勅の場面はまさに、神様から天皇への部分にあてはまります。

ただ、奏上体の祝詞の中でも古い内容を表すものが存在するので、どちらの文体が古いかと断定することはできません。

「宣る」と「申す」が一緒に使われているケースもあります。例えば、祈年祭や龍田風神祭の祝詞があります。

大祓詞にみられる「安国と平らけくしろしめせと事依さし奉りき」などと「依さす」や「みこともち」は神様から天皇に、天皇から役人に御委任される、同格(同権?)の意味になるので、神聖な言葉を口にすると考えてもいいと思います。

夏と年末に行う大祓式では「宣る」と言って大祓詞を参拝者に読み聞かすシーンに出くわします。

私の感じでは大祓詞にも人や空間を祓い清める威力を感じますので、ただ単に参拝者に向かって読み聞かしているのではないと思います。

万葉集では女性は「名乗る」は結婚を承諾する意味に等しいのです。名前はこの時代は特別です。漫画の『陰陽師』に一番短い呪は名前とありました。

高校野球などの宣誓や宣言を考えると、上から下ではありません。自分の意志を公にして、何か効力が発生するように思います。

こうやって「宣る」の使い方を並べると、上から下の使い方は少ないように思いますね。宣るは神様のお力が発揮する言葉を口にすることでいいんじゃないでしょうか。

まとめ

祝詞の文体と書き方についてまとめてきました。

今回、なぜこの記事を書いたか理由は「宣るって上から下へ言う」んじゃないよなっと思ったからです。

前回は祝詞の語源から祝詞について考えました。その中で「のりと」は「宣る言葉」と書きました。

「宣る」について『古語林』では「神や天皇がその神聖な意向を人民に正式に表明する、が原義。転じてむやみに口にすべきではないことを明かして言う意になる」と解説されています。

むかーしむかしは、神様の声聞くことができるシャーマン的な存在がムラの中心で、神様の声がムラの運命を左右していた時代がありました。シャーマンが聞いた神の声を村人に伝えた言葉が「ノリト」のはじまりでした。お告げですね。

この時は神様から庶民への上から下です。

しかし、今の一般的な祝詞は下から上です。「宣る」の語義から随分ズレています。「それなのに、ノリトと言っていんだろうか?もやもや~」となってたわけです。

前回と今回を通してみてより深く「祝詞とはなにか?」が理解出来たように思います。祝詞(のりと)はノル・コトバであり「何か見えないお働きを期待して申し上げる言葉」といえます。

決して上から下へ「宣る」コトバではないなと思います。

みきみかん
みきみかん

これで「上から下」の呪縛が解けるといいなぁ

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